人と音楽と道具

みなさん、こんにちは。吉山の部屋へようこそ。

今回は、最近とあるお客様からお売りいただいたOVATION 1612のメンテの様子と

その出来事をご紹介いたします。

OVATION 1612（LEGENDタイプ）ディープボウルです。

エレアコの代名詞的な存在で世界的にも有名なギターですね。トップは木材ですが

ボディーバックがグラスファイバーで出来ており、サウンドもエレキギターとアコースティックギターの

中間的なサウンドです。

尾崎豊やアル・ディメオラなど著名人の使用も記憶に新しいギターです。

今回、このギターをお売りいただいたお客様は、普段から良く当店を利用していただいているお客様なんですが

前回、出張買取に伺った時に「うーん、どうするかなー」とこのオベーションを売るかどうかを

迷っていらっしゃいました。何日か経って、「やっぱり、売る！」とご連絡をいただき、

ご自宅へ伺いました。とても高額で良いギターですが、アンプに繋いだ時に音が出ないのと、

ネックのジョイント部分が剥がれていたので、メンテの様子をご紹介します。

上記の写真のようにかすかに隙間が開いています。まずは、これを修理します。

こちらのギターをお売りいただいたお客様、最初に伺った時から迷っていらっしゃったんですね。

「手放そうとも思うが、思い出もつまっている」と仰っていました。お宅に伺った時、

お部屋を拝見させてもらったんですが、まず、レコードがパッと見で数百枚、

CD,DVDも段ボールにどっさり、そしてオーデイオのセットがスゴイ！

大きな真空管が5~6刺さった完全ハンドメイドのパワーアンプ、天然木材で作られた

「音を良くする為」のオーディオラック、その他LPプレーヤーにBOSEのスピ―カーセット。

本当に音楽が好きな方なんだな、とお部屋を見てわかりました。

特にJAZZがお好きらしく、「しばらくアメリカに居た」とも仰っていましたね。脱帽です。

そのお客様が、最後に仰ったお言葉が

お客様：「くれぐれも、このギターを大事にしてくれる方にお売りください。」

吉山：「・・・承知いたしました。」

お客様：「楽器を粗末に扱う人間はろくな奴じゃないからね。」

吉山：「・・・・・・・・ですよね。」

というわけで、完っ璧に仕上げていきたいと思います！（ハイプレッシャー！）

ネックとボディージョイント部分の隙間にタイトボンドを丁寧に、挿入しクランプで圧着します。

圧着すると、隙間に入っているボンドがはみ出てきますので、よく水を含ませた筆で

ボンドを取り去っていきます。ボンドを筆で取って→良く水洗い、

を繰り返しますが実はこのタイトボンド、意外と速乾性が高く、

そうこうしている間にも乾いていくんですね。なので、ここは「丁寧且つスピーディーに！」と心の中で

言いながら作業していると・・・・

水をこぼしました・・・・。

実にドン臭いです。

気合を入れなおして作業続行！なんとしても、完璧に仕上げます！

仕上がり具合です。なんとか、くっつきました。

お次はアンプにつないだ時に音が出なかったので、エレクトリック関連のチェックです。

ピックアップ→プリアンプ→ジャックの順番にテスターでチェックしていきます。

ピックアップ、プリアンプボックス内は異常なし。う～ん、すると・・・・ここか？

ジャックです。この、プラグを差し込んだ時にプリアンプのON-OFFスイッチをするであろう端子が

怪しい。・・・・実に怪しい。

接点に軽くペーパーをかけて接点復活剤を「シュッ」とひと吹き。

その後、ピックアップをドラ―バーで「コン、コン」とチェックすると・・・

出ましたね。（音が）

後はネックの調整といつも通りのフレット磨き、指板クリーニング、弦張りでOKです。

と、ここで話は変わりますがVOL.1の最後に「なぜ、私が道具好きなのか？」をお話しすると言ってましたね。

その続きを語ってみたいと思います。・・・・・・・・・・・スミマセン、特に理由は無いです。

いや、ただ純粋に「道具を使って何かをする」というのが好きなのだと思います。

実は私は大の‟釣り好き”でして、「なぜ、私はこんなに釣りが好きなのか？」と

自分に問いかけたことがあります。

その結果、3つの理由が出てきました。

①単純に魚が好き（見るのも、触るのも、食べるのも）

②長い間事情があって魚釣りに行けなかった為、たまっている（ここ最近、再開しました。10年ぶり・・）

③釣れても、釣れなくても、釣り道具を使っているのが楽しい

①はともかく、②はちょっとなんだか病んでますね。ええ。

よく、釣り人が言う「魚の引きが楽しい」「魚との駆け引きが楽しい」というのも分からなくはないんですが、

私の場合は、釣れなくてもそこそこ楽しいんですね。お気に入りのタックル（釣り道具、竿とリールのセット）

を扱うだけで幸せです。よく、部屋で電気を暗くして一人でリールを回したりしています。

つまり、本来の目的である「魚を釣る事」以前に「そのプロセスそのものを楽しんでしまおう」というわけです。

人類の歴史はおよそ200万年前から始まったとされ、進化の過程で二本足歩行、道具の使用というのがあります。

道具の使用は「知性の存在の象徴」と解釈され、また、人類の進化（脳の発達）に大きく関与しているかも？

と言われています（Wikiより抜粋）

ということは、私には「知性が存在」しており、尚且つ「脳の継続的な増大」を欲している。（発展途上中）

という仮説が成り立ちます。・・・・・・・実に複雑な心境です。

そういう意味では音楽も釣りも「道具ありき」で楽しむものとして共通点が生まれます。

機能やスペックもそうですが、その物の見た目の良さなども重要になってきます。

やっぱり、見てて「カッチョイイ～」と思わなければ使っていて、つまらないものです。

道具は使っていくうちに‟愛着”がわいてきます。使えば使うほどいい味がでてきます。

そうすると、いつも使っている道具、自分の道具でなければ作業をしたくなくなります。（私だけ？）

そんな、原始人吉山が仕上げたOVATION  1612はこちらです。

修理の腕もさることながら出来れば、「脳も発達させていきたい」と切に願いつつ、

今回の買取実績報告を終了いたします。最後まで閲覧ありがとうございました。

次回、「ピンチ到来！超難易度AAAA修理！俺に出来るのか！？」をお届けします。

乞うご期待。