1997年のオーストリア映画「ファニーゲーム」

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更新日：2016年08月13日

こんにちは、ブックオフ福岡の山田です。

今日紹介する映画は1997年のオーストリア映画「ファニーゲーム」です。

この映画はミヒャエル・ハネケという人が監督しており、
彼はオーストリア人の監督ながら「愛、アムール」でアカデミー賞外国語賞を受賞したことがある人物です。

この映画はとてつもなく暴力的でカンヌ映画祭の際には退出者が続出し、
ロンドンではビデオの発禁運動まで起こりました。

正直私も今回このブログで紹介していいものかどうか悩みましたが、
例え後味が悪くとも一生に一度は見るべき傑作だと思いますので紹介させていただきます。

ある夏の日、ショーバー一家は休暇を過ごすために湖のほとりにある別荘に向かっていました。
カーボックスにあるクラシック音楽のカセットを聞きながら楽しいドライブの時間を過ごす家族達。
やがて家族は別荘の隣人と挨拶を交わすのですが、
彼らの隣には白い服を身につけた見知らぬ二人の男がいました。

その後別荘についた家族はそれぞれの時間を過ごすことになり、
妻アナは夕食の支度にかかります。
するとそこへ先ほど隣人と一緒にいた二人の男のうちの一人が「卵を貸して欲しい」と尋ねてきました。

アナは快く卵を渡すのですが、
男はそれを帰り道に割ってしまうだけでなく、
その後台所にあったアナの携帯電話を誤って水没させてしまいます。

アナは不快に思いながらも渋々もう一度男に卵を渡します。
しかし男は２度目も「犬に吠えられたから」と言って再び卵を落としてしまいます。

やがて事態はショーバー一家と二人の男の口論になるのですが、
男達は尚「残りの卵がまだ余っているはずだ」と言って卵を要求してきます。

憤慨した夫ゲオルクは二人に出て行くよう命令するのですが、
彼ら二人は近くに置いてあったゴルフバットでゲオルクの足を殴りつけ、
そのまま一家をリビングのソファに拘束します。

そして男達はある一つの提案をするのです。
「１２時間後もあなた達が生きているかどうか賭けをしましょう」と。

まるで「時計仕掛けのオレンジ」の主人公アレックスを連想させる真っ白な服を身にまとった二人の男。
しかし彼らの目的はアレックスのような暴力そのものにあるわけではなく、
一家を利用して「ゲーム」をすることにあります。

さて、話は変わりますが読者の皆様は第四の壁という言葉をご存知でしょうか。
第四の壁とは元々演劇から生まれた言葉で
第一の壁が背景、
第二、第三がそれぞれ舞台の右側、左側、
そして第四の壁は私達客席のことを指します。

この法則は映画にも当てはまり、
観客はスクリーンの中で起こっているフィクションの世界を第四の壁を通して眺めているということになります。

そして演劇や映画にはその第四の壁を破るという手法が存在します。
それは舞台の中の人物が私達客席の存在を認知し、
私達客席に直接語りかけてくる行為のことを指します。
この手法は多くのジャンルの映画に取り入れられ、
近年では「デットプール」という映画がアメコミ映画ながらこの手法を使用したことで大きな話題になりました。

しかし、この第四の壁を破るという行為にはあるリスクが存在します。
それはその壁を破った登場人物が自分達が架空の人物であると自覚していることになるということです。

演劇や映画というものは舞台や画面でのみ表現されるフィクションによって構成されるものです。
しかしその登場人物達が我々観客に話しかけてきた時、
その存在は私達と地続きの存在になります。
つまり、その瞬間から登場人物達と私達は同じ空間を共有することになるのです。

この物語の終盤で男達のうちの一人はこんなことを言います。

虚構っていうのは今見てる映画のことさ。
そして虚構は現実と同じくらい現実なんだ。

ある一つの家族が二人の男達によって崩壊していく「ファニーゲーム」。
観客はこの映画を見る時に一家の惨劇をスクリーンの中の客観的な出来事として鑑賞します。
しかし突然犯人の男が観客に語りかけてきた時、
見る、見られるの関係性は逆転し観客はあることに気付かされます。
このゲームに参加させられているのはこのスクリーンの中の家族だけではないということに。

最後まで読んで下さりありがとうございました。
この「ファニーゲーム」という映画は既にDVD、Blue-Rayで鑑賞することが出来ます。
また、この映画には同監督がアメリカの俳優を使って撮ったリメイク版「ファニーゲームUSA」という映画もあります。
是非チェックしてみてください。

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