海外ドラマ「ブレイキング・バッド」と映画「ゴッドファーザー」

こんにちは、ブックオフ福岡倉庫の山田です。

今回紹介するものは2008年から2013年にかけてアメリカで放送されたドラマ「ブレイキング・バッド」です。

このドラマは現在「歴代で最も高く評価されたテレビシリーズ」としてギネス記録に認定されており、
今までにエミー賞を始めとする数々の賞を数え切れないほど受賞しています。

私はこのドラマを動画配信サイトHuluにて最新話が配信される度に追って見ていたのですが、
「ブレイキング・バッド」を見たという体験は私の今までの人生の中で最も重要なことの一つになり、
今後これほど優れたテレビドラマを見ることは出来ないのではないかと思うほど私にとっては生涯忘れることの出来ない大切なものになりました。

今回のブログではこの「ブレイキング・バッド」、
そしてその影響元になったと言われている名作「ゴッドファーザーシリーズ」と合わせてご紹介出来ればと思います。

本作の物語はアメリカのニューメキシコ州の中央部に位置するアルバカーキにて始まります。
50歳の誕生日を迎えた高校の化学教師ウォルター・ホワイトは肺がんであることを医者に宣告され、
余命は２年ももたないであろうと告げられます。
しかしウォルター一家の家計は癌の高額な治療はおろか普段の生活費すらままならない状態であり、
ウォルターは自分が死んだ後に取り残される家族達のことを思い苦悩します。

ウォルターには脳性麻痺の障害を持った長男、
そして11歳年下の妻スカイラーのお腹の中には二人目の子供がいます。
彼らに少しでも多くのお金を残して自分が死んだ後も不自由のない人生を送って欲しい。
しかし公立校の教師という仕事だけではそんな大金は望めるはずもありませんでした。

そんなある日ウォルターは昔の教え子ジェシーと再開します。
彼は高校卒業後定職に就かずに悪友とつるんで麻薬の製造、販売を行い、
この日麻薬捜査官達の踏み込み調査の現場から逃げ出すところを偶然ウォルターに見つかってしまいます。

そしてその夜住所を調べてジェシーの家を訪ねるウォルター。
自分の仕事がばれたことに狼狽するジェシーに対しウォルターが持ちかけた話は、
なんと自分が作る覚醒剤を売ることに協力して欲しいというものでした。

家族にお金を残すために覚醒剤密売という社会的に危険な行為に足を踏み入れたウォルター。
この「ブレイキング・バッド」というドラマではそんなウォルターが闇社会の奥に踏み込んでいくにつれて自らの闇も深めていく姿が描かれているのですが、
その動機には常に家族のためにという純粋な思いが存在します。
そのため視聴者は彼が次々に犯罪行為に手を染めていくのを見守りながらも、
一概に彼を責めることが出来ないのです。

家族のために裏社会のビジネスに手を出し、やがてその力が暴走していく。
この設定は言わずと知れた名作「ゴッドファーザーシリーズ」に重なるところがあります。

1972年にフランシス・フォード・コッポラ監督によって映画化された「ゴッドファーザー」はその二年後にPart2、そして1990年にPart3が公開され、
40年以上もの時代を経た今でも尚色褪せない名作として知られています。

40年以上もの前に作られたマフィアの映画。
そこだけを取り上げると私達には全く関係のない別世界の話に思えるかもしれません。
しかしこの物語の根底には「ブレイキング・バッド」同様、
ある二人の男の家族に対する思いが描かれているのです。

このファミリーの物語が始まるのは1901年、シチリアのコルレオーネ村。
地元マフィアのボスに家族を殺された少年ヴィトー・コルレオーネは逃げるようにアメリカへと亡命します。
アメリカに行けば豊かな生活が送れる。
そんな希望を持った数多くの移民と同様、
ヴィトーもこのアメリカで生きることを決意するのです。

とはいえ彼のような移民という立場ではまともな教育、収入、コネは望めるはずもありません。
それから16年後のニューヨーク、仕事を失ったばかりの青年ヴィトーはある一人のこそ泥との出会いで一つの絨毯を盗んだことをきっかけに生まれて初めて犯罪に手を出します。
この絨毯で家族に少しでもマシな生活をさせてやることが出来る。
その日を境にヴィトーは犯罪に手を染めるようになります。
そしてヴィトーとこそ泥クレメンザはその街を牛耳る男を殺害することでその街のボスに取って代わり、
彼の代わりに街の揉め事を仲介する組織を作り上げることになるのです。

やがてその組織は「コルレオーネファミリー」としてとても大きなマフィアの組織になり、
ヴィトーには三人の息子と一人の娘、そして一人の養子の子宝に恵まれます。
元々家族を養いたい一心で犯罪に手を染めてしまったヴィトーにとって、
子供達は何よりもかけがいのない存在であったに違いありません。

しかしその数十年後、「ゴッドファーザー」とまで呼ばれるようになったヴィトーはある麻薬組織からビジネスの話を持ちかけられるようにます。
他者との絶対的な信頼関係に重きを置いていたヴィトーはその話を拒絶するのですが、
そのことをきっかけにファミリーと麻薬組織との抗争が始まります。
ヴィトーは銃撃による重度の怪我を負い、
ヴィトーの子供達は否応にもこの戦いに巻き込まれていくことになるのです。

そして今までずっと自分のマフィアの家系から遠ざかろうとしてきた三男マイケル・コルレオーネが麻薬グループのトップを射殺することでファミリーの運命は大きく変化していきます。

マイケルはその後ヴィトーから正式に「ドン」の名を受け継ぎ、２代目のゴッドファーザーとして君臨します。
しかしマイケルの考えるファミリーのビジョンとはヴィトーとは大きく異なるものだったのです。

彼はヴィトーの死後ファミリーの邪魔になる者達全てを殺し、
その後合理ギリギリのカジノやホテルの経営で今まで以上に莫大な利益を上げます。
しかしそのような危ない橋を渡る以上、彼の強気な姿勢はファミリーに更に多くの敵を生み出していくことになります。
その結果マイケルは敵はおろか、ファミリーの兄弟にすら裏切り者に対して容赦ない制裁を与えるようになるのです。

かつて愛する家族のために闇社会の仕事に手を出してしまったビットー。
そして父の地位を受け継ぎ暴走を続けるマイケル。
数十年後に更なる悲劇が待ち受けていることも知らずに、
裏切り者である実の兄を射殺した罪の重さに葛藤する場面で若き日のマイケルの物語は幕を閉じます。

ニューヨーク最大のマフィアの家族についての物語と麻薬を製造する高校教師の物語。
これだけ聞くと両者は全く違う物語に思えるかもしれません。
しかし両者は家族を守るために自らの城を作り上げ、その巨大さ故に崩壊してしまう話として同じことを語っているのです。

平凡な高校の科学教師ウォルターは純度の高いドラッグ「クリスタルメス」を生み出すことで、
やがてアメリカのドラッグ産業を牛耳る怪物「ハイゼンベルグ」へと変貌していきます。

かつて授業中に話を聞かない生徒に注意することすら出来なかった気弱で優しい彼は、
自らが踏み込んだ裏社会での経験を通して少しずつ今まで自分の中に押し隠されていた邪悪で凶暴な一面に気付き始めます。

そして癌の治療費を稼ぐ程度に考えていた麻薬のビジネスはどんどん巨大なものになり、
それ故に彼と相棒の元教え子ジェシーは様々な敵と対峙していくことになるのです。

ウォルターはこの対立の中で何度も窮地に立たされ、
妻スカイラーは夫がただ事ではない事態に巻き込まれていることを察します。
彼女は夫の身を案じるのですが、ウォルターは最早自分の中のハイゼンベルクの呪縛から逃れられずにいたのです。
そしてハイゼンベルクはスカイラーに対してこう言い放ちます。

スカイラー、君は誰と話をしているのか全く分かっていない。
教えてやろう。
私は危険な状態にいるんじゃない。
『私』そのものが危険なんだ。
男がドアを開けて撃ち殺されるのは私だと思うか？
違う、ドアをノックするのは私の方だ。
彼は社会的に見れば完全に犯罪者であり、
彼の作ったメスで多くのドラッグ中毒者はよりドラッグに依存し、
ウォルターに関わった人間は一人残らず次々と不幸になっていきます。

しかしそれでも彼は最後まで家族を愛し続け、守ろうとします。
鑑賞する人によって意見は分かれるとは思いますが、
私はこのウォルターという人間をどうしても嫌いになることは出来ませんでした。

果たしてウォルターの物語は最終的にどこにたどり着くのか。
その結末は是非ご自分の目でお確かめ下さい。

最後まで読んで下さりありがとうございました。
ドラマ「ブレイキング・バッド」は現在DVD、Blu-ray、そして動画配信サイト「Netflix」にて鑑賞することが出来ます。
（＊現在動画サイトHuluでは有効期限切れのために同ドラマを鑑賞することが出来なくなっていますのでご注意下さい。）
また現在本作に登場する弁護士ソウル・グッドマンを主役にしたドラマ「ベター・コール・ソウル（ソウルに電話しよう）」も上記の方法で鑑賞することが出来ます。
是非チェックしてみて下さい。