ドラマ「ファーゴ」と映画「ノーカントリー」

初めまして。
ブックオフ福岡倉庫という場所で働いている山田です。
この度マーケティング部門担当の山下さんからブログをやってみないかというお誘いをいただき、
今月から自分の趣味にしている映画、海外ドラマなどから選りすぐりのオススメ作品を紹介しようと思います。
このブログが当店ブックオフ福岡を利用するきっかけになってくれればとても嬉しいです。
よろしくお願いします。

今日紹介するものは2014年にアメリカで放送されたTVドラマ「ファーゴ」です。
このドラマは1996年に公開されたコーエン兄弟の監督、脚本による映画「ファーゴ」のドラマ版であり、
映画の19年後の物語となっています。
と言っても映画とドラマに物語上の直接な関わりはほとんどなく、
映画を見ていない人でも十分にこのドラマを楽しむことができます。

コーエン兄弟とは兄のジョエル・コーエン、弟のイーサン・コーエンの二人で活動する映画製作者であり、
今までに「ファーゴ」、「ノーカントリー」、そして最近では脚本家としてスピルバーグ監督の「ブリッジ・オブ・スパイ」などで高い評価を受け、
中でも「ノーカントリー」はアカデミー賞で４部門受賞するという快挙を成し遂げました。
そんな彼らが製作総指揮という立場で18年ぶりに、しかもテレビドラマとしてファーゴの物語を再び描いたのですが、
私としてはこれがオリジナルの映画を上回る面白さであるだけでなく、
「ノーカントリー」とも大きな関連性のある物語でとても驚きました。

この物語の舞台はミネソタ州ベンジーという場所。
主人公レスターは冴えない保険会社のセールスマンとして働いています。
彼は未だに高校時代の友人（とその息子達）からいじめに遭っており、
家に帰っても奥さんから「あなたなんかと結婚しなければ良かった」と言われる始末。
そんな彼はある日病院でローンという男に出会い、
自分がそのいじめっ子を殺してもいいと話を持ちかけられるのです。

レスターはこの時彼の言っていることを冗談として受けて止めていたのですが、
後日そのいじめっ子の死体が発見され、

その日を境に彼の日常は大きく狂い始めていくことになります。

このレスターという男を演じているのは「SHERLOCK（シャーロック）」、
「ホビット三部作」などで有名なマーティン・フリーマンであり、
コミカルな演技に定評がある俳優です。
そんな彼が序盤でこそいつもの楽しい演技を披露してくれるのですが、
話が後半に差し掛かるにつれ彼の人格、道徳観が大きく変貌していき、
今までに見たことのないマーティン・フリーマンを見せつけられました。

またローンという男を演じている男はビリー・ボブ・ソーントンという俳優が演じており、
この人は俳優を本業としながらも自らが監督、脚本、主演した「スプリングブレイド」という
映画でアカデミー脚色賞を受賞した経歴があります。

私は「ノーカントリー」という映画が大好きなので気がついたのですが、
彼が演じているローンという人物、
実は「ノーカントリー」に登場する殺し屋のシガーという人物にそっくりなのです。
目の前にいる人間をコイントスで殺すか否かを決めてしまう常識とはかけ離れた思考を持つシガー。
「ノーカントリー」とは偶然麻薬取引の現場から大金を見つけ出しそれを持ち逃げした男モスが、
その大金の元手の組織が雇っているシガーに追われる逃亡劇になっており、
「２人の男」や「大金」というキーワードは映画、ドラマ版のファーゴと重なる所があります。

そしてお金を持ち逃げした男モス、
彼はベトナム帰還兵であり帰国後は配管工の仕事をしているものの生活は苦しく奥さんとトレーラー暮らしをしています。
彼の中にもまたレスターと同じように今の自分、自分の人生を変えたいという葛藤が常にあったのではないのでしょうか。

レスターやモスが行ったことは非道徳的であり、彼らが行う選択に共感出来ない人もいるかもしれません。
しかしもし自分が彼らのような立場に身を置かれたらと考えると、
彼らのやったことを全否定できないような危うさがこの２作品にあるような気がします。
ドラマ「ファーゴ」でローンはこう言っています。

君の問題はだね、ずっとルールに気を病んで生きていたということだ。
そんなものは存在しないのに。

赤潮だよ、レスター。俺たちの人生は赤潮だ。他人がひねりだしたクソを毎日食わされる。
上司、女房、そんなやつらにすり潰される。
もし屈したままなら、君のもっとも深く大事な部分は未だにサルなんだとやつらに思い知らなかったとしたら、
君は洗い流されるだけだ。

18年ぶりにコーエン兄弟が描いた新しい「ファーゴ」。
しかしそれは単なる続編としてではなく、
彼らが「ノーカントリー」で描いたことを
計10話というドラマならではの長さでさらに深く掘り下げた作品になっていると思いました。

このドラマは現在日本ではシーズン１しか見ることが出来ないのですが、シーズン２は既にアメリカで公開されており、
来年2017年にはシーズン３の放送も決定しているようです。
しかもそれらは１とは全く違う物語になっているようでいつか見える日をとても楽しみにしています。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
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（私はドラマ版「ファーゴ」がどうしても見たくて一ヶ月プライムお試し登録を利用しました。）

P.S.
映画版、ドラマ版共に最初に「この物語は実話です」というテロップが出るのですが、
この物語は実話ではありません。
このことを受けて実際に日本人女性が隠された大金を探しに行き、
雪の中で行方不明になり凍死したという都市伝説が一時アメリカで広まったことがあるみたいです。